2018年07月19日

裁判傍聴記「新城市役所は大丈夫?」

 7月18日、名古屋地裁での裁判傍聴に行ってきました。この裁判は、市民5人が新城市を訴えた裁判です。

 提訴理由の要旨は、「新城市の新庁舎建設に際し、市が新庁舎建設事業用地外の建物に対して支出した物件移転補償費約1200万円が違法支出であることを理由に、市長に対して、1200万円を返還するよう(新城市に)求める。違法原因は、実際には居住者がいないにもかかわらず、人が居住していることを前提とした移転補償がなされたこと、建物の移転補償契約の決済を承認した市長が、これを知っていた、ということで、居住者がいないことを知りながら移転補償契約の決済が市に対する不法行為に当たる」というものです。

 提訴日が、2016年12月21日ですので、既に1年7ヵ月ほどが経過しています。今回の裁判で、初めて証人が法廷に立ちました。

 証人として呼ばれたのは、原告の一人である加藤芳夫前議員、被告側として総合政策部の山崎元部長(既に退職)、現役の星野建設部長(提訴内容に関わった時は、総合政策部参事)の3人でした。

 証人を尋問するのは、原告、被告側(新城市の顧問弁護士)の弁護士。確認の大きなポイントは、「移転関連補償物件(本来は移転補償とならないが、補償物件に対して関連しているとして補償対象になった物件)に対しての事実確認」でした。

 当初、新城市が依頼したコンサルから、「移転関連補償に適さない」という報告書が新城市に提出されていましたが、最終的にはその報告書が「関連移転補償すべき物件」となっています。報告内容が変わった点において、市長の関与を明らかにし、その責任を果たさせることを裁判所に求めているということになります。

 提訴資料をベースに、各弁護士から各証人に尋問が続けられました。最大の疑問は、星野氏の答弁でした。弁護士にも指摘されていましたが、「なぜ、あなた(星野氏)は、関係市民から請求された通りに移転関連補償に進もうとしていたのか?」ということです。

 移転関連補償の3条件(居住の可能性、常時使用しているという実績、排水関係)を示して、コンサルに最終報告を出させましたが、星野氏が答え(移転関連補償物件である)をコンサルに示していることに弁護士が疑問を示していました。

 請求された補償に対して、星野氏は「本人が証明するのは難しいので、私たちが調べた」と答弁しているのです。明らかに補償するために新城市が一市民に便宜を図ったという構図となっています。

 居住(請求者の母の居住の有無)の可能性の点が最大の争点だと思いましたが、星野氏の答弁は「今は骨折(だと聞いた?)して入院しているが、いつかは返ってくると期待しているという家族の想いを最優先に考えたので、条件は満たされている」というものです。

 続いて弁護士に「入院先を確認したのか?診断書は確認したのか?」と問われると、星野氏は「確認はしていない」と答弁。弁護士に「最終判断は誰がしたのか?部内では確認したのか?」と問われると、星野氏は「自分が判断したが、関係部署との相談はしたと思う。部内での確認ははっきり覚えていない」などと答弁。

 「部内での確認」については、山崎氏の答弁から「部内での共有はされていなかった」ことが明らかにされました。星野氏の答弁を聞いた裁判官からは、「組織的な判断が求められているはずだが、組織性が感じられない。あなたは現時点でも、その判断が正しかったと考えるか」と問われる始末でした。新城市役所の信頼性を揺るがす答弁を繰り返していましたが、「正しかったと考えている」というしかありませんでした。

 山崎氏の尋問経過を振り返っても、関係市民に求められた物件を「移転関連補償物件」にするために新城市が動いていたようにしか見えてきません。「いつかは帰ってきて欲しいという家族の思いに応える」ために、多くの確認を敢えて避けていたように感じました。

 「入院した」と聞いても、「入院先を確認しない。診断書は求めない」、「施設に入所した」したという情報も入手しながら入所先を確認しない、最終的には、施設に入所していた事実を示され、しかも帰ることができないまま、補償物件は取り壊されています。

 市民の税金で補償することに対しての認識の欠如が甚だしいというのが、率直な感想です。部内での確認が無い、上司への報告が無い、市民に頼まれれば十分な確認調査もしないまま補償(他ではありえない対応です!)など普通の組織では考えられない実態があぶり出されました。

 疑問を感じた裁判官から「他でもこの様な対応をすることはあるのか?」と問われたこともありましたが、「これまでこの様な経験が無いが、私は問題ないと判断した」という答弁(星野、山崎氏とも同様答弁)。新城市役所の組織的蓄積に裏打ちされていない行政力量の無さを示している様な答弁でした。

 「自治」を市民に唱えながら、その「自治」を支えるはずの市長をはじめ市幹部がこの程度の認識では、市民自治は「絵に描いた餅」に終わるでしょう。市民から疑念を抱かれた穂積市長は、自ら説明責任を果たすこともなく、困った市民を置き去りにしている感じです。

 裁判の結論は、新城市役所がいい加減(市長関与ではなく、職員が余りにもレベルが低かっただけ)と考えれば、見えてくるようにも思いますが、その様に考えるしかないのであれば、余りにもどうしようもない職員を抱えている市民が哀れに思えてきます。

 もし、職員のレベルが他市と同レベルであったと考えれば、市長関与の存在で合点がいきます。市長指示に逆らえない職員で固めた組織になっていますから。穂積市長がどの様に関与したのか?関与がなかったのか?それを明らかにするために、8月1日に穂積市長は法廷に呼ばれています。職員の不手際を認め自分の指導責任を認めながら、最終的に「職員の判断」に委ねたと言い切ってしまうのか?何にしてもすっきりしない新庁舎建設です。                            文責  白井倫啓

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